朝のティータイム
私が訪れたのは午前11時頃だった。 その日は晴れたり曇ったり、少し小雨が降ったり、
ヨーロッパの北の地方特有の天候だ。 私はコートを着ていたが、広い展示スペースや
1階のアトリエ、3階のオフィスを見て回るうちにすっかり暑くなり、コートを脱いで腰掛に
置いた。 トマスが鍵方になっているガラスの大きな窓を開け放すと、外気が入ってきて、
寒いというより一層ヨーロッパを感じさせる清涼感があった。 ヨーロッパ人は寒さに強い。
まだ暖房が入らない時節だが、私は上着を着ていたが、彼らは半そでのTシャツだった。
お茶にしよう、とクリストフが言って、トマスはお湯を沸かしに立った。 やがて出てきたの
はいくつかの種類のティーバッグだった。 好きなものを選んでくださいというので、私は
イングリッシュ・ティーにした。 彼らはグリーン・ディーだ。
私は喉が渇いていたこともあり、勧められるままに3杯飲んだ。 一杯目がなくなるとす
ぐトマスが入れてくれる。 彼らの語り口のトーンが優しいので、心が和んだ。
そうして30分も会話した後、そろそろお暇をしようとしてトイレの場所を聞いた。 それは
展示スペースを出た右の扉の部屋だった。 左側に壁がありその中にシャワーがあった。
そして大きなバスタオルが2枚掛かっていたのが印象に残った。